音楽の未来を感じることのできる作品である
従来のジャズのフォーマットにこだわることなく即興、あるいはグループ表現の自由さというキーワードをもとに、自在な演奏を繰りひろげている光(フォトン)が、なんとアイルランドのケルト・ミュージックに取り組んだ新作をリリースした。これまでにもジャンルを越えて、しなやかな感性を作品に注ぎ込んできた光(フォトン)だけに、企画そのものに驚くことはないけれども、それらがまぎれもない彼らの音楽として表現されてゆくのには、やはり感心せざるを得ない。リズミックな(1)の優雅なアレンジをはじめ、17世紀のハープ奏者が書いた(4)では、後半ピアノとドラム・ソロとの絡み合いがとてもスリリングだ。いっぽうショパンのメロディにアプローチした(2)では、原曲がもっているロマンティックな哀感がダンサブルなアレンジとともに表現されるが、こんなことをいともたやすく演ってしまうあたりが、このバンドの個性であり面
白いところなのだろう。アイルランドの港町の名をとった(3)をはじめとするアイリッシュ・トラッドにまじって、この地から生まれた世界的ポピュラー・ソング(7)(9)が、クラシカルな美しい響きで奏でられる。(7)でフィーチャーされる、存在感あふれるベース・ソロも素晴らしい。あくまで日本発の音楽として表現してゆく光(フォトン)。ジャンルを超えて、音楽の未来を感じることのできる作品である。
(岡崎正通)
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