----- スイングジャーナル2007年2月号より
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ディスク評
■純粋な音楽美で酔わせてしまう■
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いつも意表をついたアレンジで、美しいジャズ・コーラスを聴かせてくれるXUXU。アカペラ・グループでありながら、さまざまなレパートリーを、これだけ凝った演出で表現してみせるユニットは、他に類をみない。 |
そんなXUXUが、誰もが知っているクラシックの名曲ばかりにアプローチをおこなってみせた本アルバム。すでに、“光(フォトン)”というバンドでデビューを飾った伊賀拓郎の編曲は、大胆かつ独創的なもので、“えっ、これがあの曲?”と思わせるほど、もとのメロディーやリズムを自由に扱っている。おなじみのメロディーは、さまざまに形を変えたかと思うと、いきなりストレートな形で登場したり、その変幻自在さがじつに面
白い。XUXU語ともいうべきボーカルやコーラスが一体になった、不思議な世界。ショパンの(6)で、おなじみ英雄ポロネーズのメロディーから、ラテン・ナンバーに変化してゆくあたりの呼吸の見事さにも感心させられる。卓越した技巧をもつ彼女たちの歌声と、まったく同格の立場で強力かつスリリングな“もうひとつの声”を演じてゆく川本のベース・プレイも圧巻。ベースという楽器に、これほどの存在感をもたせたアレンジというのも、ほとんど例がなかったのではないだろうか。すべてが異色ずくめの、このアルバム。それでいて実験臭さはまったくなく、純粋な音楽美で酔わせてしまうのが、XUXUのXUXUたるゆえんなのである。
(岡崎正通) |
■これまで以上に奔放な広がりを示すようになってきた
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女性4人のコーラス・グループXUXUも、早いものでこの作品が8枚目になった。今回は自分たちだけでなく初めてベーシストを迎え、加えて初の外部アレンジャーも起用した意欲的な作りが楽しめる。 |
実力派で固められたコーラス・グループに強力な助っ人が登場した、といったところだろうか。とくに川本悠自の力強いベース・ワークは、ともすれば繊細な部分を徹底的に追求しがちになるXUXUに、これまでとは違った生命力を与えたようだ。生命力といえば、アレンジを担当した伊賀拓郎の非凡な才能にも舌を巻かされた。こちらは同じレーベルからアルバムを発表している光(フォトン)のピアニストである。まだはたちのこの若者は、国立音大の作曲科で優秀な成績を収めていると聞いた。
彼らふたりのサポートを得て、XUXUがクラシックの名曲を取り上げる。ありがちな企画ではあるものの、全員のバックグラウンドがうまい形でジャズと溶け合った出来映えはかなりの内容だ。ジャズ・ファンにもお馴染みのクラシック曲が選ばれている点も、親しみを持ちやすい。そして何よりもここに来て、XUXUのコーラスがこれまで以上に奔放な広がりを示すようになってきたことが頼もしい。オープンとクローズドのハーモニーを巧みに使い分けることで表現の領域が広がった。外部からの力を注入した効果
がここにも現れている。
(小川隆夫) |
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