「ワインデイズ」レーベル

----- スイングジャーナル2007年2月号より -----
記事

XUXU
クラシックを完璧にジャズ・コーラス化!

【国際的水準に達した XUXUのコーラス】
 クラシックのジャズ化は昔から珍しくない。だが今回のXUXUのように完璧にやられると、驚くというより呆れる人が多いのではないか。女声コーラスが、川本悠自のベースだけでクラシック曲を歌いまくる。それも、ところどころに歌詞を加えながらだ。すなわちダバダバ、だけではないのである。それもビゼーの「アルルの女」の“ファランドール”ならフランス語で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲ならばロシア語で、という具合。もちろんモーツァルトならドイツ語である。アマデウスも、まさか生まれて250年後に東洋の果 ての国で自分の“アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク”がドイツ語で歌われるとは思わなかったに違いない。編曲はフォトンの伊賀拓郎。インタビューしてから何年も経つが、XUXUの彼女たちは全員がひじょうに真っ当な普通 のお嬢さんで、それが伊藤さんという意欲的なプロデューサーに見込まれ、ジャズを仕込まれ、見事に羽ばたいたのである。グローバル・スタンダードという言葉があるが、このグループは間違いなく国際的水準にある。可憐で屈託のない彼女たちの姿を見ていると、日本人というのは物凄いことを、なんでもなさそうにやってのける民族なのだと確信する。のけぞる思いである。ところどころにドラムスのブラッシュ・ワークのようなものが聴こえるが、これもメンバーのボーカリーズなのだ。楽器は、繰り返すがウッド・ベース一本。それで、こういうサウンドが出てくるというのは一体どういうことなのか。

【何から何まで型破り 進化を続ける4人組】
 プッチーニの「トスカ」の有名なアリア“星も光りぬ”はベースのソロから始まり、これはオペラだからイタリア語の歌詞が付いている。だが、彼女たちもまさかプッチーニをコーラスでやるとは思っていなかった、のではあるまいか。これまでのディスコグラフィーを思い返すと、彼女たちの精進振りがわかる。デビューは02年で、5月に録音された『XUXU's jazz』である。すぐにインタビューした。3361*BLACK(サンサンロクイチブラック)という変わったレーベル名は、型破りの伊藤秀治というプロデューサーの名前と共に以前から知っていた。伊藤さんの山中湖畔のスタジオにも、今は亡きデューク・ジョーダンを訪ねて出向いている。しかしここまで型破りなコーラス・グループを生み出し、それを育て上げることになるとは、想像していなかった。凄いのは、成長しているのは間違いないが、XUXUというグループの基本はまるで変わっていないことで、これは伊藤さんの目の確かさによるものだ。2作目は03年の『か・れ・は』で、これも『枯葉』ではなく『か・れ・は』なのである。ユキ、ユミ、アスカ、ノリコの実力が十二分に出ていた。04年には『ピアニスツ』と『ねぇ、』の2作。凄いですね。05年はビートルズ作品集『ザ・ビー』、そして07年の本作となる。これからまたどういうことをやって驚かせてくれるのか、見当もつかないXUXUなのだ。
(馬場啓一)

(馬場啓一さんが「フランス語で、ロシア語で、」と書いて下さっているところは、 ご存じXUXU語でして、XUXU語の表現が一段と巧みになりそれぞれの言語で歌っている が如くに聴こえるということです。)


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