「イッツジャズ」レーベル

----- Magi 2006年3月号より / インタビュー記事 -----

新世代カルテット
光(フォトン)INTERVIEW
鋭く若い感性がぶつかりあう、鮮やかな輝き!

 若い4人が集まって、新しいジャズ・カルテットが誕生した。その名も「光」と書いて“フォトン”と読む。ピアノ・トリオにヴァイオリンを加えた、20歳前後の若いプレイヤー4人。クラシックの教育を受けてきたメンバーもジャズとそれぞれの出逢いかたをして、鋭い感性と高い技術をぶつけ合っている。
 デビュー盤『PHOTON』を聴くと、ピアソラ《天使の死》の鮮やかな演奏で斬り込む冒頭から、《オペラ座の怪人》やショパンの「ノクターン」(を5拍子で!)、あるいはメンバーによる才気煥発なオリジナル曲など、その音楽は名を裏切らず輝かしく、熱い。
 これこそが若さ、と驚嘆するのだが、「まず自分のことに関して言えば、とにかく演奏がまだ若いですね」とドラムスの赤迫翔太(東京藝大3年)は謙虚に語る。彼が音楽をはじめたのは「父親が趣味でドラムをやってたのを真似しはじめたのがきっかけ」だそうで、「もともとロックだったんですけど、大学に入って木村君とやるようになってから、ジャズを」
 その木村将之(東京藝大3年)がコントラバスを始めたのは高校の時から。「吹奏楽部がフュージョンだジャズだといろいろやっていた。そこでウッドベースもやってくうちに音大に行ったんですけども。まあ、大学に入る前からジャズは好きでしたね」
「木村さんはいい曲を書くんですよ」
と仲間を讃えるのは、伊賀拓郎。昨年3月に浅草JAZZコンテストで金賞を得た気鋭のピアニストだ。
「『これちょっと弾いてみてください』って木村さんが出す楽譜が、難しいけれどもすごくいい」
「最初集まったとき、伊賀くんとすごく趣味が合った」
(木村)
「そう! ミシェル・カミロとか、そらで弾ける曲が同じだった。僕は3歳くらいからピアノを習ってたんですけど、父親がアマチュアでジャズをやっていたんで、小学校高学年あたりからジャズを弾くようになっていったんです」(伊賀)
 ふたりの会話を聴きながら笑うのが、ヴァイオリンの白須今(国立音大2年)。「僕は最初、このふたりの会話を聴いていても全然わからなかったんですよ。ずっと久石譲さんとかが好きで聴いていたんです。だから、初めて足を踏み入れた時は、ミシェル・カミロ? って(笑)」
 しかし、艶やかな熱さで斬り込んでくるヴァイオリンも含め、4人が斬新なる出逢いを遂げたデビュー盤のスリリングな音楽はいい。ほとんど一発録りという勢いの録音、赤迫に言わせると「みんな個性が違いすぎて、4人で寄り添っていくというよりは、全然違うキャラクターが同時に音を出した結果 がこれだ、という感じなんです。これからどうしていくべきか、あるいは自分の引き出しもはっきり見えた。アルバムは結果 というより、ここからが僕らの始まりっていう感じで聴いていただけたら嬉しいです」
 輝く出発点から上昇してゆく若い熱さを、我々も共有していこう。
(取材・文:山野雄大 / 2006年2月13日 天王洲アイル にて)




 Copyright 2002 3361*BLACK, Ltd. All rights reserved.