「ワインデイズ」レーベル

----- Magi(マギー)2004年7月号より -----
ついつい7曲目から聴いてしまった・・・

・・・なんとあの「ひげダンスのテーマ」アカペラ版である。これでジャズ史上初の
故いかりや長介氏のトリビュート曲が出来上がったわけだが、XUXUにとっては今まで
意識的に避けていたヴォイス・パーカッションを思い切り披露した一曲となった。
 が、アルバムは実際には「テネシー・ワルツ」でゆっくりと幕があがる。例によって
歌詞は“XUXU語”なのだが、その無限の言語と音色の巧みな変化が、曲の持つ本来の姿
にファンタジックな衣をまとわせているようだ。スタンダード・ソングとしては「スマ
イル」「星に願いを」「マイ・フェイバリット・シングス」等のカバーがあり、シュー
マンの「トロイメライ」を経て、世にも奇妙な(?)スコット・ジョプリンの「エン
ターティナー」が続く。
 そして「ひげダンス」の後はシカゴのヒット「素直になれなくて」を素直に歌わない
で(?)意外にもちょっと教会音楽風の美しいコーラスで歌い、アルバムを締めくく
る。この非常にポップな要素とアーティスティックな要素が渾然一体となったXUXUの
コーラス・ワールドを名エンジニア、及川公生氏が真空管マイクでワンポイント録音し
た。本当に生の女性4人が「ねぇ、」と語りかけてくる。振り向かない人、
いないよね?                           (馬場雅之)


----- スイングジャーナル2004年7月号より -----
これまでより一段階上にあがったことを確信できる

 最初の1曲を聴いただけで、このグループのアンサンブルが、これまでより一段
階上にあがったことを確信できる。素材こそ新大陸の土の匂いのするポップスだ
が、アカペラという言葉からの連想のせいか、旧大陸のカペラ(礼拝堂)に響くに
相応しいおごそかな雰囲気さえ漂っている。続くチャップリンの (2) では、荘厳さ
が軽やかにほどけて、ユーモラスな余裕さえ感じさせる。特に重要なのは、その変
化の演出に付け焼き刃でない自然さがあることだ。さらに3曲目では、ディズニー
の映画音楽に、アフリカ音楽のリズムやハーモニーが最も洗練されたかたちで投影
されている、いや、それどころか、無数のサウンドと音楽の記憶が無国籍なフィル
ターにかけられて、懐かしく、楽しい音の世界を紡ぎだしている。このアルバムで
の初めての試みとして、ボイス・パーカッションの導入というわざがあるのだが、
たんなる小道具や飾りではなく、トータル・サウンドとしての歌に無理なく融合し
ている。これはXUXUがつねに同時録音の一発録りを音楽的ポリシーとしていること
と深い関係がある。つまりは、音楽のスポンタネイティと人間的な経験の総体性の
重視ということだ。ボイス・パーカッションという点からは、ドリフの「ひげダン
ス」が収録されていることが大きな話題になるだろうが、全体のゆるやかな流れに
一個のアクセントとして作用しており、違和感はまったくない。
                                (中条省平)




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