新しい試みを目指した女性シンガー2人を擁する2ボーカル・グループの94年作だ。そ
の名を、ノーマモナという。イギリス出身のノーマ・ウインストンと、デンマークで活躍
していたモナ・ラーセンの2人のボーカリストの名前をつけて呼んで、このグループ名が
ついた。この2人にピアノのジェフ・ガードナーはじめ、ベース、パーカッションの5人
という編成である。パリに集結して録音された、お披露目作がこのアルバムだった。
プロデューサーが、あのXUXUの生み&育ての親、伊藤秀治氏だと説明した方が解りやす
いだろう。ノーマモナでも彼がミュージカル・ディレクションをとっていた。音の重なり
に、ひとかたならぬこだわりと革新的な意欲をもっている伊藤氏のことだ。本作でも2人
がスキャットを駆使し、楽器的なフィーリングを極めようとした楽曲から、2人とも歌詞
を歌う曲まで、そのアプローチは多面的だ。後者であっても、2人の声の関係は様々に変
化する。一人がメロディを歌い、もう一人が後を追うような形、またオペラの二重唱のよ
うに一見異なるメロディをそれぞれが歌いながらひとつの物語を作っていくスタイル、そ
してユニゾンになる場合等々。それが1曲のなかでも変化していくので、聴き手は万華鏡
をのぞくような気分が味わえるはずだ。後者の(2)や(8)が、特に素晴らしかった。この音
楽的冒険の続編をぜひ期待したいものだ。 (中川ヨウ)
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