「サ・バ」レーベル

 

----- スイングジャーナル2004年5月号より -----
欧州の個性派シンガー二人を核とした新たな試み

 新しい試みを目指した女性シンガー2人を擁する2ボーカル・グループの94年作だ。そ
の名を、ノーマモナという。イギリス出身のノーマ・ウインストンと、デンマークで活躍
していたモナ・ラーセンの2人のボーカリストの名前をつけて呼んで、このグループ名が
ついた。この2人にピアノのジェフ・ガードナーはじめ、ベース、パーカッションの5人
という編成である。パリに集結して録音された、お披露目作がこのアルバムだった。
 プロデューサーが、あのXUXUの生み&育ての親、伊藤秀治氏だと説明した方が解りやす
いだろう。ノーマモナでも彼がミュージカル・ディレクションをとっていた。音の重なり
に、ひとかたならぬこだわりと革新的な意欲をもっている伊藤氏のことだ。本作でも2人
がスキャットを駆使し、楽器的なフィーリングを極めようとした楽曲から、2人とも歌詞
を歌う曲まで、そのアプローチは多面的だ。後者であっても、2人の声の関係は様々に変
化する。一人がメロディを歌い、もう一人が後を追うような形、またオペラの二重唱のよ
うに一見異なるメロディをそれぞれが歌いながらひとつの物語を作っていくスタイル、そ
してユニゾンになる場合等々。それが1曲のなかでも変化していくので、聴き手は万華鏡
をのぞくような気分が味わえるはずだ。後者の(2)や(8)が、特に素晴らしかった。この音
楽的冒険の続編をぜひ期待したいものだ。                (中川ヨウ)


知性と洗練されたセンスが滲む室内楽的な音楽

 イギリスのベテラン、ノーマ・ウインストンとデンマークのモナ・ラーセンという2人
の女性ボーカリストが組んだ "ノーマモナ" のデビュー作である。キャリアと国境を越え
て、類例のないユニットを日本制作によって結成したことは、意外性を含めて注目される
が、このプロジェクトの人選はピアニストのニルス・ラン・ドーキーによるもの。3361*
BLACKのサ・バ・レーベルが推進してきた、パリ発信ジャズのサウンド・コンセプトをこ
こでも踏襲している。それは知性と洗練されたセンスが滲む、室内楽的な音楽だ。
 選曲はエディ・ハリスのタイトル・トラック以下、ジャズ・オリジナルとスタンダー
ド・ナンバーで統一。これだけを見ればありがちな内容に思えるかもしれないが、そこは
フリー系ジャズメンとの交流が深いウインストンゆえに、ユニークな工夫も認められる。
(1)はスキャットでテーマをさらりと流し、ピアノ・ソロへ移行。その後ボイスが絡み合い
ながらエンディングへと向かう。(2)ではノーマとモナが1行ごとに歌詞を交代で歌い、
(3)では楽器的な歌唱も自在に織り混ぜながら、歌詞に描かれた世界を表現する、といった
具合だ。各曲における2人の役割分担が決められ、しかも即興的な自由さが保たれている
のが魅力。個人的に近年気になるピアノ+ベース+パーカッション・トリオを配したアイデ
アと、ガードナーらサポート・メンバーの手堅い演奏もいい。       (杉田宏樹)

 



 Copyright 2002 3361*BLACK, Ltd. All rights reserved.