「イッツ・ジャズ」レーベル

----- スイングジャーナル2004年1月号より -----
メリハリのある強力なバップ・アクセントのダイナミズム
 3361*BLACKレーベルでのデューク・ジョーダンは、本当にいろいろなことをやって
いる。スタンダード集をやり、バラード集をやり、富樫雅彦と共演したかと思うと、尺八
ともコラボレートした。そこへいくと、87年に録音されたこのアルバムはまた一段とスト
レートにわかりやすい切り口を持っている。ジョーダン・ピアノの本質であるバップに思
い切りスポットライトをあてている。それも、実に痛快に、楽しくスインギーに。このア
ルバムのどこを聴いても、ジョーダンのピアノは、心の底から楽しげに歌っている。(1)
(5)(7)といったジョーダンを代表する自作オリジナル、それに思わず口ずさみたくなるよ
うなメロディの、よく知られたスタンダードを素材に、リラックスした会場の雰囲気が手
に取るように伝わってくるなか喜々として鍵盤に指を弾ませている。それはまた、いぶし
銀と称されたあの滋味溢れる粘りのあるタッチだけでなく、がっしりとした骨太のブロッ
ク・コード、そしてなによりもジョーダンのピアノのトレードマークであるメリハリのあ
る強力なバップ・アクセントのダイナミズムとなってぐいぐいと伝わってくる。
 得意技のアルコとスキャットのユニゾンをたっぷりと披露するメジャー・ホリー、手堅
いバッキングでトリオをスイングさせるジェイク・ハナと、共演者たちの一体感あるサ
ポートもまたこのアルバムを楽しくしている。              (土倉明)
ビバップ期から修羅場をくぐり抜けてきた人生の重さを実感
 数多くあるビバップ系のピアニストの中で、デューク・ジョーダンの特徴をひと言でい
うなら「スケールの大きさに伴う重さ」ということになるのではないか。なまじっか『フ
ライト・トゥ・デンマーク』が売れちゃったもんで、ジョーダンというと「線の細いロマ
ンチックなピアニスト」という印象を抱いているファンもいるようだが、冗談じゃない。
ハンク・ジョーンズの流麗さも、ケニー・ドリューの躍動感も、トミー・フラナガンの気
品も持ち得なかったこの人の、唯一、しかし必殺の武器。それこそはたったの1音で場の
空気を「デューク・ジョーダン」に染め上げてしまう、重量感のある音なのだから。
 山中湖の"3361*BLACK"でライブ録音された本作は、そんなジョーダンの「重さ」が
非常によく捉えられたアルバムだ。それはもう冒頭から明らか。昔きいたときもそうだっ
たが、今回も「ジョードゥ」のイントロ部分が鳴り響いた瞬間、「お?」っと身を乗り出
してしまった。もちろん録音のレベルのことは考慮しなければならないけれど、何度か
ジョーダンの実演に接した経験からすると、たしかにこの人のピアノはこういう音がして
いた。演奏されているのは有名なバップ・チューンや彼のオリジナルばかり。にもかかわ
らずこの音楽が我々を魅了するのは、この音の重さ、もっといえば、ビバップ期から修羅
場をくぐり抜けてきた人生の重さ、ゆえにだろう。            (藤本史昭)

「ライブ・ライブ・ライブ」
デューク・ジョーダン
Live Live Live / Duke Jordan

BK-3025 ¥3,000(税込)

 

---デューク・ジョーダン・トリオー---
デューク・ジョーダン / Duke Jordan (piano)
メジャー・ホリー / Major Holley (bass)
ジェイク・ハナ / Jake Hanna (drums)



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