「ワインデイズ」レーベル

 

----- スイングジャーナル2003年10月号より---------------

即興で形態が変容していく希有なアカペラだ

 昨年末、3ジャンル同時発売でデビューした驚異のアカペラ・グループ、
XUXU(しゅしゅ)。あれからライブも多数こなし、即興ボイス・パフォー
マーとして着実に進化した跡がうかがえる新作の登場だ。今回はジャズ系の
スタンダード集。数々のジャズの名演で親しまれている楽曲が選曲されてい
る。XUXUのユニークなオリジナリティは、グループ表現の個性を強め、さら
に自由度を増したアカペラをみせている。彼女たちのアプローチがユニーク
なのは、ジャズのよくあるパターンにまったくとらわれていない点だ。ジャ
ズ・コーラス・グループを含めて、ジャズ的な語法を意識的に参考にしてい
ない。強いて、近いタイプをあげるとすれば、ボビー・マクファーリンだろ
うか。4人それぞれの音楽背景と楽曲が、ジャズ・インプロビゼーションで
結びつく。そこからXUXUのユニークな音楽が生まれてきている。
 この新作では、それぞれの音楽背景がより鮮明にあらわれている。ジャズ、
クラシック、ワールド・ミュージック、聖歌、純邦楽、童謡などのエコーを
感じることができる。ある形状から別の形状へ変化させる断片を作成するCG
手法を、モーフィングと呼ぶが、彼女たちの音楽背景はモーフィングのよう
な役割を果たしている。多彩な音楽性がブレンドされていきながら、即興で
形態が変容していく希有なアカペラだ。同じような音楽は、世界のどこにも
存在しないだろう。                  (高井信成)

 

確かなジャズの息吹を擁した女性アカペラ・グループ

 平安時代の『源氏物語』ではないが、男が女を手塩にかけて育てる時、独特
の愛情とクリエイティビティすなわち創造力が生まれる。ユニークな作品群で
知られる伊藤秀治プロデューサーが7年の歳月をかけて育み、鍛え上げたボー
カル・グループ(しゅしゅ)の第2作である。なにより女性4人という編成が
ユニークである。各人が音楽大学で正規の教育を受け、学理を身にまとった才
媛だ。伊藤プロデューサーの薫陶よろしきを得て、類稀なるコーラス・アルバ
ムを生み出した。ジョセフ・コスマの@で意表をついたあと、まるで彼女たち
のために書かれたようなAが続く。音楽を突き抜け、女性の生理の根源にまで
到達するような鋭いアプローチであり、悲痛な叫びになっている。しかし同時
に確かなジャズの息吹を擁している。陶然とする。大したものだ。DとEと、
異なったアプローチによるガーシュイン・チューンも聴かせるし、マンシーニ
稀代のヒットHも、女声で料理されると気分が違ってくる。感心する。過去に
アニタ・カーが取上げていたが、彼女に聴かせたい。30年ほど昔に大物評論家
レナード・フェザーが肩入れしていたサウンド・オブ・フィーリングという女声
デュオがいたが、彼にも聴かせてあげたかった。前衛的なメソッドを美形でカ
バーするキャラクターが共通するのだ。やるじゃないか日本人も、と言って伊
藤プロデューサーの肩を叩いたに違いない。         (馬場啓一)

 


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