「サ・バ」レーベル

 

----- スイングジャーナル2003年8月号より---------------
強力なテクニックとセンスに裏打ちされた創造的音楽

 フランスとイタリアのジャズ・ウーマンがデュオで奏でる宮崎アニメとディズニーの
世界・・。硬派なファンは「またオシャレ系かよ」と舌打ちしそうなシチュエーション
だが(実は僕も資料を見たとき、舌打ちした)、しかし実際に音をきいてビックリ。こ
れ、オシャレ系とかいやし系ではとても括りきれない、強力なテクニックとセンスに裏
打ちされた、実に創造的な音楽である。
 ベースのエレーヌ・ラバリエールは、かの「チェロ・アコースティックス」で重責を
担った超実力派。その彼女と、チェロ・アコつながりのニルス・ラン・ドーキーが発掘
したリタ・マルコトリが繰り広げる音楽は、けっしてきれいなだけではない、それどこ
ろか必要とあらばフリーな展開も辞さない強い意志に貫かれたものだ。その意志とは、
かんたんにいえば「通り一遍の演奏だけはすまい」ということ。結果、ディズニー・ナ
ンバーにはかなり斬新なアレンジがなされ、今回の録音ではじめて知ったという宮崎ア
ニメ・ソングに至っては(特にH)、ファンがきいたら「こんなのトトロじゃない!」
と怒りかねない過激な改変が加えられている。そのすべてに必然性があるのか、そして
それが制作者の狙い---“いやしアコースティックス”---にマッチしているのかはい
ささか疑問だが、ただ、一つの表現として見た場合この音楽は、無反省的にスタンダー
ドをやってるようなものの100倍ぐらい誠実だと思う。
                                 (藤本史昭)

 

宮崎アニメ&ディズニーが“おしゃれな”ジャズになっていた!?

 ディズニーと宮崎アニメの主題歌をモチーフに、オシャレなジャズ・アルバムが誕生
していた!本年、「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞を受賞し、改めてその才能が広
く認知された宮崎駿。国内アミューズメント・パークが不況の中、開演20周年を迎えて
なお絶大な人気を誇る東京ディズニーランド。話題に事欠かない日米アニメ界の両巨頭、
そんな彼等の作品は、その内容の素晴らしさもさることながら、常に注目されるのが主
題歌やサントラの魅力である。
 日本人ならば、一度は耳にしたことがあるであろう宮崎・ディズニー・アニメの主題
歌が、パリとローマ、2人の美人ニュージシャンによって奏でられるとは、何ともエレ
ガントな話ではないか。
 その2人とは、ベースのエレーヌ・ラバリエールとピアノのリタ・マルコトリ。エレー
ヌはチェロ・アコースティックスでの活躍が印象深いプレイヤー。女性ベーシストとい
うだけで珍しい存在だが、彼女の場合性別を超えてその実力は折り紙付き。ダニエル・
ユメール(ds)ら、幾多の巨匠との共演歴がその真価を物語る。美貌に似合わぬ 強者であ
る。対するリタは、“エレーヌと顔をつき合わせて演奏できるプレイヤー”という条件の
もと、チェロ・アコースティックスを率いるピアニストのニルス・ラン・ドーキーが見つ
けてきたという。当初ピアニスト選びはエレーヌのお膝元パリで行われたらしいが、ふさ
わしいプレイヤーがおらず、ローマ在住のリタに白羽の矢が立ったらしい。日本では全く
無名と言って良い彼女だが、このアルバムを聴く限り、かなりの実力者であることが理解
できる。
 一聴してまず感じるのは、2人の楽器奏者としての実力である。さすがクラシックの素
養が市民レベルにまで浸透しているヨーロッパ、その伝統はミュージシャン一人一人にま
で深く浸透している。発売後は恐らく“癒し・ヒーリング”的な側面で語られるであろう
このCD、しかしそういった視点でのみ聴かれるとしたら、少しばかりもったいない。表面
のコーティングは甘口だが、その中身は聴きごたえ十分な本格派のジャズである。
 今や甘口ジャズのスタンダードとして定着した感のある<チム・チム・チェリー>
(メリー・ポピンズ)なども、エレーヌのエッジの立った奏法が聴く者の襟を正すハードな、
それでいて品格を失わない仕上がりとなっている。  このアルバム、録音は94年とのこ
と。そのためチョイスされた宮崎アニメは「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」等、
80年代の代表作が中心である。今月久しぶりに装いも新たに再発されることになったが、
宮崎・ディズニー共にさらなるポピュラリティを獲得している今、話題となることは必至だ
ろう。
 制作は、ヨーロッパ発のアコースティック・ジャズのオリジナル録音で話題をさらう
サ・バ・レーベル。3361*BLACKを主催する伊藤秀治氏がプロデューサーをつとめるこの
レーベルならではの、コンセプト・サウンド両面に渡って貫かれた“こだわり”が楽しめる。
 夏の蒸し暑い夜に、一服の清涼剤としてそっと自室で流したい、そんなCDである。
                                    (高橋慎一)


----- Magi(レコード新聞社)より---------------
実は先日20周年のディズニーランドへ行ってきたばかり・・・

・・・そして今年に入ってアカデミー賞受賞の<千と千尋の神かくし>を観たついでに
<天空の城ラピュタ>も<魔女の宅急便>も<となりのトトロ>も、もう一度観たりし
ていた。そこにこのファンタスツ!なんと選曲がディズニーや宮崎アニメの曲が題材な
のだ。演奏しているのは二人の女性ヨーロピアン・ジャズ・プレイヤーでベースの
エレーヌ・ラバリエールとピアノのリタ・マルコトリ。パリ発信がモットーのこのレー
ベルらしく、取り上げられた曲はパリの空気を思いっきり吸い込んだアコースティック・
ジャズ仕立てゆえ、原曲を聴き慣れている耳には演奏やアレンジどれをとっても新鮮に
感じることだろう。
 二人の女性の奔放なプレイは、イージーに本来のメロディをロマンティックに演奏し
たり・・・ということはまったくなく、かなりの冒険が頼もしい限り。ファンタス
ティックであると同時にクリエイティヴ。一音一音まったく無駄を感じない妙な完成度
がどの曲を聴いた後にも余韻のように残る。パリ風味のディズニーとジブリはカフェ・
オ・レかワインなどで部屋の中でゆっくりと聴くのがよさそうです。94年10月録音。
                                  (馬場雅之)

 

 


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