「ワインデイズ」レーベル

 

----- スイングジャーナル2003年7月号より---------------

 

寺井尚子、マルの参加曲に注目!


 ビリー・ホリデイは、マラ・ウォルドロンの名付け親で、マラはビリーの腕に抱かれて洗礼を
受けた。先月発売されたマルの『マチュリティー2』で、マラの歌声を聞いて感動された方が多
いと思うが、本作はその8か月後に録音されたマラの初リーダー作である。標題曲を含む6曲が
マラのオリジナルで、残りはビリーの愛唱歌を集めた。
 全編を通して、深く心に染み入る感動の作品だ。マラは、こんな素晴らしい作品を何と一日で
録音した。最大の聞きものは、標題曲の<ララバイ>だ。マラはピアノを弾きながら、しっとり
としっかり歌い上げていく。そこへ即興でからめていく寺井尚子のオブリガードが美しい。歌が
終わり、マラが吉野弘志をバックに淡々とソロを取る。やがて尚子がまるで書かれた譜面 を奏で
ているがごとく、抜群のソロを取る。背筋がゾクゾクして、感動する。この録音時、尚子はデ
ビュー作『シンキング・オブ・ユー』を吹き込む2年前だった。現在大人気の尚子の才能と実力
が、ここに記録されている。プロデューサーの伊藤秀治は、シングル・カットしたいぐらいの出
来だと語っているが、その通りである。この1曲だけでも、本作には高い価値がある。素晴らし
い録音が続いていく時、ずっとスタジオで静かに見守っている男がいた。それは、マラのお父さん
マルである。とうとう我慢ならず1曲だけ<ゼム・ゼア・アイズ>で、ピアノを弾いた。泣けて
くる。                                    (高木信哉)

 


 


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