「サ・バ」レーベル

 

----- スイングジャーナル2003年6月号より---------------

 

ラン・ドーキーも参加する謎に満ちた3管サックス・バンド

いやはや、やられてしまった。ピアノとベースに3管のサックスが加わり、アンサンブルとソロ
を展開するパターンと思いきや、何とサックスがパーカッション・サウンドを奏でてしまう。多重
録音は一切なし。サックスのキーを動かした時に出るカポカポというタンポ音や、マウスピースに
息を吹き込んでのブラシ・ワークが、軽快にリズムを刻む。意表を突いたアイデアの勝利だ。Eで
はタップ音までサックスがやってしまうのだから驚きだ。アイデア負けしない実力も十分。アレン
ジを担当したのが、ドラマーでもあるクラウス・スオンサーリというのもうなずける。
 グループ名のパリズム(parhythm)はパリ(paris)とリズム(rhythm)の合成語。サックスの役割から
は当を得たネーミングだ。ミュージカル「コーラスライン」の名曲が、決して押し付けがましくな
い、洒落たサウンドで奏でられる。全体を引き締めるのはピアノのニルス・ラン・ドーキーだ。切
れ味の効いたリズムとスピード感、美しいタッチとメロディアスなアドリブで、サウンドの輪郭を
作っていく。ファンキーなCでは独特のタイム感で個性を光らせている。それにしても、Aには、
サックスがパーカッション音をどうやって出しているのか、どうしてもわからないところがある。
ジャズ研でアルトを吹いていた筆者としては、それが気になって仕方ない。あぁ、ライブが見たい!
                                        (佐藤大介)

 

 

Niels Lan Doky --- ニルス・ラン・ドーキー(ピアノ)
サックスの音響を打楽器として捉えた意外性と刺激に満ちたレコーディングだった

 ピアニスト/プロデューサーとして活躍しているデンマーク出身のニルス・ラン・ドーキーが、
パリに移住してから14年が経つ。近年はユニバーサル系のレーベルにリーダー・アルバムを録音、
AORシンガーのジノ・パネリとのコラボレーション、日本制作によるトリオ・モンマルトルなど、
多彩な活動で多忙の日々を送っている。そして、もうひとつニルスの活動で優れた成果 を収めた
のが、3361*BLACKのサバ(Cava)レーベルだ。『コーラスライン/パリズム』、チェロ・アコー
スティックスの三部作など、サバ・レーベルの作品が再リリースされている。ニルスはパリをコン
セプトにしたこのレーベルのコ・プロデューサーを務め、演奏にも参加した。パリとサバ・レーベ
ルの関係について、彼は次のように語っている。
 「NYを離れるときはためらいがあった。でも、パリに住んでみて、この街と人々がいかにアート
とアーティストに対して敬意を払っているかよくわかった。パリでは、モダンなライフ・スタイル
が、伝統と歴史にバランスよく融和している。アーティストは落ち着いた環境の中で、自由な発想
の冒険にチャレンジできる。そのようなパリの気風は、当然ながらぼくの音楽に影響を与えた。今
では、NYにいたとき以上に街や人々からインスパイアされている。サバ・レーベルのユニークな音
楽は、パリだから実現することができた」。  サバ・レーベルは、3361*BLACKの伊藤秀治プロ
デューサーとニルスの連携により制作が進められる。伊藤プロデューサーがコンセプトや選曲などを
決めて、ニルスがその具現化をアシストする形だ。ニルスは伊藤プロデューサーのユニークな発想は、
刺激になったという。
 「チェロ・アコースティックスでは、ウォームかつダークなテクスチャーを持つチェロという低
音楽器の特質を斬新なサウンド・アプローチに反映させた。ぼくはこの録音で初めてファツィオリ
(Fazioli)のピアノを弾いた。それ以来、このピアノのトリコになっている。パリズムでは、サックス
の音響を打楽器として捉えるという発想に驚いてしまった。意外性と刺激に満ちたレコーディング
だった。結果にはとても満足している。編曲の大部分を手がけたニューヨーク在住の友人のドラマー、
クラウス・スオンサーリの功績も大きい」。ニルスは、今後も「伝統的なジャズと斬新なプロジェク
トの両方で、パリから新鮮なジャズを世界に発信していきたい」と、意欲満々に語ってくれた。
                               ( インタビュー・文/高井信成)

 


 


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